JohnLawCoinという新しい暗号通貨を開発しています。分類としては無担保型のステーブルコインに属する暗号通貨で、「ドルや円などの担保を保有することなく完全にアルゴリズム化された金融政策(Algorithmic Central Bank)のみで通貨価値を安定させる手法が存在すること」を証明するための社会実験です。
この手法を確立できると嬉しいことがあって、まず暗号通貨的には、ドルなどの担保に価値を紐付けることなくステーブルコインを実現できるようになります。担保を排除することで担保を保有する主体が必要なくなり完全自律分散で動かせるようになるので、(Libraが受けたような)法的規制から自由なステーブルコインを作ることができます。現実世界の応用としては、発展途上国の中央銀行が十分な担保(=ドル準備)を持たずとも固定相場制を運用できるような金融手法を確立するためのヒントになればと思っています。ぼくの本当の興味はここにあります。
無担保型のステーブルコインとしては、BasisCoin、Empty Set Dollar、Terraが有名ですが通貨価値が安定した成功例はまだありません。Empty Set Dollarはしばらく1コイン=1ドルを保っていましたが、下落が始まると止まらなくなり現在は1コイン=0.04ドル以下になっています。従来の無担保型のステーブルコインは、通貨価値が上昇したときは新しくコインを発行することで通貨供給量を増やし、通貨価値が下落したときは債券を発行することで通貨供給量を減らしますが、「過剰に供給されたコインを回収する手段として債券は機能しない」ことがEmpty Set Dollarの実験から見えてきました。Terraの暴落も同様の原理で起きています。JohnLawCoinでは、コインとETHを交換する公開市場操作を導入することでこの問題を解こうとしています。
JohnLawCoinの解説スライドはこちらです。
より詳細なアルゴリズムはホワイトペーパーをご覧ください。こちらのウォレットで遊べます。
これまでドルペッグやドル化を採用せざるをえなかった発展途上国がJohnLawCoinのアルゴリズムを利用して暗号通貨として自国通貨を発行することで自国通貨主権を確立する手法を研究しています。こちらのホワイトペーパーをご覧ください。
CBDC(Central Bank Digital Currency)より「ずっと面白い」話として、中央銀行が自身の法定通貨をトークン化してスマートコントラクト上に発行することで、いかなる民間発行ステーブルコインよりも安定した「真のステーブルコイン」を作るというアイディアがCBSです。ホワイトペーパー(英語)またはホワイトペーパー(日本語、日銀視点)をご覧ください。
CBDC(Central Bank Digital Currency)よりもっと面白いこと考えようよ!!ということで、CBS(Central Bank Stablecoin)という提案をホワイトペーパーに書きました。
— Kentaro Hara (@xharaken) December 26, 2022
英語:https://t.co/2HzM1XNgo1
日本語(日銀視点):https://t.co/lSOcUD8JnZ
アイディアはいたってシンプルで、
中央銀行がパブリックブロックチェーン上に自身の法定通貨をステーブルコインとして発行すればよい。簡単に言えば「1万円」という価値を伝統的な紙幣と硬貨という貨幣形態に加えてスマートコントラクトでも発行すればよい。それだけの話なんですがいくつかの社会問題を解決できると思っています。
— Kentaro Hara (@xharaken) December 26, 2022
1. 民間発行ステーブルコインの信用のなさが問題になっているが、CBSができれば真に信用のあるステーブルコインを実現できる。
— Kentaro Hara (@xharaken) December 26, 2022
2. 民間発行ステーブルコインの暴落が世界金融を混乱させることを恐れて金融当局が規制を強めようとしているが、
3. 法定通貨担保型の民間発行ステーブルコインは100%担保が要求されるのに対して、CBSでは担保を保有する必要がない。だって中央銀行は通貨発行権を持ってるんだから。CBSの方がはるかに資金効率が良い。
— Kentaro Hara (@xharaken) December 26, 2022
4. 貨幣形態という観点で考えると、CBSは伝統的な紙幣や硬貨という貨幣形態に加えてスマートコントラクトにも貨幣を発行することに相当し、《貨幣形態の現代的な自然な延長》に過ぎない。(スマートコントラクトという技術が消えない限り)10年後にどこの先進国もやっていない状態の方が想定しにくい。
— Kentaro Hara (@xharaken) December 26, 2022
5. CBSの発行国は貨幣発行益を手に入れることができる。ただし膨大な貨幣発行益を手に入れられるのは最初にCBSを成功させた国だけなので、「10年後にいずれかの先進国がCBSをやっているかどうか?」の答えがYesだと思うのであれば、国家戦略として真っ先に取り組んだほうがよい。
— Kentaro Hara (@xharaken) December 26, 2022
6. CBDCは国内で流通している貨幣を電子マネー化するだけの技術であるのに対して、CBSは法定通貨の流通範囲を国外のブロックチェーン経済圏へと拡大する(=通貨圏を拡大させる)という意味で、質的に新しいことが起きる可能性があってずっと面白い。
— Kentaro Hara (@xharaken) December 26, 2022